柔道は脳を損傷するような事故が起きることがある。しかし、柔道が生命の危険をはらんでいるという認識は競技者や指導者の間ではそう高くない。こうした中、「全国柔道事故被害者の会」(小林泰彦会長)が3月に発足、柔道事故の実態を探り、再発防止策を検討する。平成24年度からは中学で武道が必修化されるだけに正しい理解が求められている。(日出間和貴)
◇
柔道事故の特徴は、市に至る事故や重度の負傷事故の発生確率が非常に高いことだ。
国立愛知教育大の内田良講師(教育社会学)の調べでは、昭和58年から平成21年までの27年間に中学や高校のクラブ活動や授業で108人の生徒が命を落としていた。中学の部活動で「死亡確率」(生徒10万人当たりの死亡生徒数)を比較すると、柔道は突出し、高校でもラグビーとともに高い数値だという。
「被害者の会」の小林会長の三男は16年12月、中学顧問の男性教師との練習中に脳障害を起こして倒れ、今もリハビリ中だ。「学校で何が起きたのか、親として当然ながら知りたい。しかし、学校や教育委員会、警察に何度聞いても『分からない』の一点張りだった」と小林会長は無念を口にする。
一方、全日本柔道連盟では、指導者ら向けの冊子「柔道の安全指導」を作ったり、講習会を開いたりして事故防止に努めてきた。冊子では、指導者が民事、刑事の法的な責任を問われることがあると警告。内在する危険性の回避を求めているが、現場でどう実践していくのかについての記述は少ない。
◆危険な競技と認識を
これまで学校でのスポーツ外傷というと、肩や腰、ひざ、手首といった部位が中心で、脳損傷といった深刻な事態については論じられてこなかった。
神奈川県立足柄上病院(松田町)脳神経外科の野地雅人部長によると、柔道はボクシングと同じ「コンタクトスポーツ」のカテゴリーに入り、脳に衝撃を与える危険をはらんでいるという。
「脳は頭蓋骨(ずがいこつ)の中で髄液にぷかぷか浮いている状態で、外界からのショックをある程度吸収する能力を持っている。しかし、外部からの力が強くなると脳が激しく揺さぶられ、ひどくなると出血する」と説明。そのうえで、「柔道が危険な競技であることを認識することが大切。スポーツ医学について無知な指導者が多過ぎる」と危惧(きぐ)する。
脳の病気は必ずしも外見や自覚症状として表れるわけではない。事故からしばらく経過して症状が出るケースもある。小林会長は「危険な投げ技を禁止したり、頭部を何かでガードするなど、具体的な対策を講じない限り、犠牲者はなくならないだろう」と話す。
被害者の会は6月13日、都内で「柔道事故と脳損傷」と題したシンポジウムを開く。
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一方、全日本柔道連盟では、指導者ら向けの冊子「柔道の安全指導」を作ったり、講習会を開いたりして事故防止に努めてきた。冊子では、指導者が民事、刑事の法的な責任を問われることがあると警告。内在する危険性の回避を求めているが、現場でどう実践していくのかについての記述は少ない。
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これまで学校でのスポーツ外傷というと、肩や腰、ひざ、手首といった部位が中心で、脳損傷といった深刻な事態については論じられてこなかった。
神奈川県立足柄上病院(松田町)脳神経外科の野地雅人部長によると、柔道はボクシングと同じ「コンタクトスポーツ」のカテゴリーに入り、脳に衝撃を与える危険をはらんでいるという。
「脳は頭蓋骨(ずがいこつ)の中で髄液にぷかぷか浮いている状態で、外界からのショックをある程度吸収する能力を持っている。しかし、外部からの力が強くなると脳が激しく揺さぶられ、ひどくなると出血する」と説明。そのうえで、「柔道が危険な競技であることを認識することが大切。スポーツ医学について無知な指導者が多過ぎる」と危惧(きぐ)する。
脳の病気は必ずしも外見や自覚症状として表れるわけではない。事故からしばらく経過して症状が出るケースもある。小林会長は「危険な投げ技を禁止したり、頭部を何かでガードするなど、具体的な対策を講じない限り、犠牲者はなくならないだろう」と話す。
被害者の会は6月13日、都内で「柔道事故と脳損傷」と題したシンポジウムを開く。
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by n0ak6rri08
| 2010-04-24 17:33